アイ村の500メートル圏内にすべての親戚がいるんだよ、と笑うフィリップ。

小さな村で代々葡萄を作るために必要なのは競合というライバル意識ではなく、「分かち合い」の精神。
ぶどう栽培、収穫、醸造や貯蔵とシャンパーニュ造りのすべての工程は秘密主義で行うのではなく、皆で協力し合うこと、助け合うことが大切なのだ、と話します。

家業を継ぐ前までは大都会でエンジニアの職についていたフィリップ。
伝統を大切にするだけではなく、革新的な技術や考え方も柔軟に取り入れ、常にインターネットで世界中の栽培に関する情報を集め、学び続けています。
さまざまな栽培技術を知るフィリップは、大手メゾンの栽培責任者を含めたアイ村の農家に頼られていて、「フィリップ、霜害を防ぐにはどうしたらいいんだ？」などと相談されることも多いとか。

現在ロジェ・ブリュンはアイ村を中心に素晴らしい畑を62箇所も持ち、その葡萄は「ボランジェ」「ゴッセ」「モエ・エ・シャンドン」「ペリエ・ジュエ」など高価なシャンパーニュを造る大手メゾンから高く評価され、毎年葡萄が買い付けられています。

これは非常に優れたテロワールを持つ畑を有している、そして、「いいぶどうを栽培する農家」として信頼されている証と言えるでしょう。

また、圧搾、醸造技術にも定評があり、時には大手メゾンが葡萄を持ち込むこともあります。その素晴らしい保有畑の中でも、特に優れた畑の葡萄はメゾンには販売せず、独自ブランドとして「ロジェ・ブリュン」のシャンパーニュを造っています。

保有する62箇所の畑はそれぞれに日照や土壌などの個性を持っています。その中でも「アイ村で一番最初に葡萄が熟す畑」と皆が知る、「ラ・ペル」。

隣接するのはボランジェ、ドンペリニョン（モエ社）。

シャンパーニュの中心地エペルネの町を見下ろす南向きの斜面。日照に恵まれ、常に風が吹き抜けることで病気や害虫から葡萄を守っています。その土壌はミネラルを豊富に含み、香り高く力強いピノノワールを生み出します。
この小さな畑のピノノワールだけで造られるシャンパーニュ「ラ・ペル」ブレンドが特徴のシャンパーニュにおいて、単独の畑だけでシャンパーニュを造るのはとても難しく、ビンテージごとの個性も非常に強くでます。
フィリップは毎年ラ・ペルを造りますが、出荷を許可するのはできのよかったビンテージのみ、数年に一度です。